2010-01-01から1年間の記事一覧

『古語の謎 書き替えられる読みと意味』

白石良夫 著 中公新書 ISBN978-4-12-102083-3 近世・近代の古学、古典文献学に関する批判エッセイ。 いくつかの事例を挙げて近世古学及び近代文献学の限界やドタバタ振りを指摘した本で、こうした批判はたいてい面白いものではあるから、そうしたもので良け…

『睡眠の科学 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか』

櫻井武 著 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-257705-2 オレキシンを中心に睡眠について書かれた本。 おおむね、睡眠の脳科学に関する現時点でのまとめ、といった本で、別段特にどうということはないが悪くはない本だと思う。興味があるならば、読んでみて…

『天皇はなぜ万世一系なのか』

本郷和人 著 文春新書 ISBN978-4-16-660781-5 中世における出世について書かれたエッセイ。 評論としてはやや苦しいと思うが、歴史エッセイとしてならばそれなりのエッセイ、という本か。エッセイで良ければ読んでみても、というところ。 結論ではないにして…

『実録・警視庁公安警部 外事スパイハンターの30年』

泉修三 著 新潮文庫 ISBN978-4-10-133791-3 退職した警察官が自らの半生をつづった本。 基本的には職業もののノンフィクションで、公安警察というそれなりに興味を引く経験をしてきているのだから、それなりには面白い。興味があれば、読んでみても良い本か…

『ことばと思考』

今井むつみ 著 岩波新書 ISBN978-4-00-431278-9 人間の思考と言語とのかかわりについて論じた本。 要するに、言語がその人の認識や世界観を規定するというサピア=ウォーフ仮説についての心理学的な検証が書かれたもので、結論的には、言語がその人の認識に…

『恐竜はなぜ鳥に進化したのか 絶滅も進化も酸素濃度が決めた』

ピーター・D・ウォード 著/垂水雄二 訳 文春文庫 ISBN978-4-16-765172-5 地球生命の進化史を酸素濃度の変化と関連付けて論じた本。 部分部分は割と面白いところもあったので好事家向けには悪くない本だと思うが、大部の本で細かいことをがたがたとやってい…

『戦国合戦の舞台裏 兵士たちの出陣から退陣まで』

盛本昌広 著 洋泉社・歴史新書y ISBN978-4-86248-633-2 戦国時代の軍事行動の実際について書かれた雑録。 サブタイトルにあるように出陣から退陣まで一通り書かれた雑録で、テーマはなく、かなり細かいことを重くやっている本。一言でいえば好事家向けの本…

『人体再生に挑む 再生医療の最前線』

東嶋和子 著 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-257700-7 いくつかの再生医療の実例に関するレポート。 特別ではないが、レポートといえば現状についての一通りのレポートという本か。そうしたもので良ければ、という本。 多分網羅的ではないだろうし、「〜…

『インフレーション宇宙論 ビッグバンの前に何が起こったのか』

佐藤勝彦 著 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-257697-0 最新の宇宙論に関するコラム。 初心者向けで、深い内容はないので、インフレーション宇宙論についての解説というよりは、宇宙論に関するコラム、と考えた方が良い本だと思う。 個人的にはもうちょっ…

『高杉晋作の「革命日記」』

一坂太郎 著 朝日新書 ISBN978-4-02-273356-6 高杉晋作の日記を紹介した本。 元々一次史料なので、そういうものまでも読みたいという好事家向けの本。だから、それでも良ければ、というところか。 ばらばらの時期に少しずつ書かれた断片的なものでしかないし…

『ブラックマネー 「20兆円闇経済」が日本を蝕む』

須田慎一郎 著 新潮文庫 ISBN978-4-10-128352-4 暴力団の表経済進出の現状に関するリポート。 渾身の、というよりはやや通り一遍なリポートで、その分、狼が来るぞ的な話に過ぎなくはある本か。 地上げとか新興株式市場とか、個人的には今更というものでしか…

『絵はがきにされた少年』

藤原章生 著 集英社文庫 ISBN978-4-08-746607-2 南部アフリカに住む人々に取材したルポ。 南アフリカに派遣されていた新聞記者がアフリカ大陸の南側に住む何人かの人の等身大の姿をそのまま伝えようとしたようなルポで、人の姿を描いた軽い読み物でさくさく…

『なぜ人は砂漠で溺死するのか? 死体の行動分析学』

高木徹也 著 メディアファクトリー新書 ISBN978-4-8401-3495-8 人の死に様に関する読み物。 全体的に、法医学者が書いたやややわらかめのエッセイ、であり、エッセイとして悪いものではないが、それ以上のものでもない、という本か。 そうしたものなので、そ…

『大砲と海戦 前装式カノン砲からOTOメララ砲まで』

大内建二 著 光人社NF文庫 ISBN978-4-7698-2654-5 艦船に載せる大砲の歴史と、砲を用いて闘われた海戦のいくつかが書かれた読み物。 やや読みにくい部分はあるが、読み物としては一冊の読み物、という本か。 のである、が多用される文章はやや読みにくく、…

『前方後円墳の世界』

広瀬和雄 著 岩波新書 ISBN978-4-00-431264-2 古墳時代や前方後円墳に関していくつかのことが書かれた本。 あまりテーマ的なものはなく、雑多なコラム、といった感じの本ではあるが、そうしたもので良ければ読んでみても、という本か。 特に可もなく不可もな…

『財務官僚の出世と人事』

岸宣仁 著 文春新書 ISBN978-4-16-660765-5 大蔵省担当の新聞記者だった著者が、取材メモを基に大蔵官僚の出世レースに関するいくつかの断面を描いた本。 大体のところ断片的なエピソード集、といった感じの本で、出世レースを描いているだけに俗物的な楽し…

『信長が見た戦国京都 城塞に囲まれた異貌の都』

河内将芳 著 洋泉社・歴史新書y ISBN978-4-86248-592-2 戦国時代の京都について書かれた本。 個人的にはやや表層的という印象を受けたが、戦国時代の京都に関する一通りのまとめ、といえば、まとめなので、そうしたもので良ければ、という本か。 表層的とい…

『自動車保険金は出ないのがフツー』

加茂隆康 著 幻冬舎新書 ISBN978-4-344-98179-9 損保会社はなかなか保険金を払いたがらない、ということが書かれた本。 損保会社はなかなか保険金を払いたがらない、という以外に、特に内容はない。 読み捨てるならば、こんなもの、とはいいえるが、本当にそ…

『いじめとは何か 教室の問題、社会の問題』

森田洋司 著 中公新書 ISBN978-4-12-102066-6 いじめに関するまとめ。 前半は、いじめ問題の歴史やいじめについての研究史を簡単にまとめたもので、後半は、いじめの対策として、子どもに対する市民性教育を行ってソーシャルボンドを強くすることを考えなけ…

『エントロピーがわかる 神秘のベールをはぐ7つのゲーム』

アリー・ベン‐ナイム 著/中嶋一雄 訳 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-257690-1 エントロピーについての解説書。 基本的に、サイコロを用いた仮設実験によって、エントロピーの増大という現象が10^23個というオーダーの原子や分子が示す挙動の確率的な…

『「権力」に操られる検察 五つの特捜事件に隠された闇』

三井環 著 双葉新書 ISBN978-4-575-15357-6 逮捕されて検察を追われた元検事が検察特捜部の捜査方向を批判した本。 元検事が書いているだけに、自分が描いた物語にきっちりと調書を落としていく検察手法の恐ろしさとか(裁判では法廷における証言よりも供述…

『年金は本当にもらえるのか?』

鈴木亘 著 ちくま新書 ISBN978-4-480-06561-2 年金に関して、厚生労働省のごまかし振りを批判した本。 基本的に厚生労働省を煽ったアジテーションの本で、そうした楽しみはあるので、それで良ければ、という本か。 アジとして以上のことがいえているかどうか…

『運は数学にまかせなさい 確率・統計に学ぶ処世術』

ジェフリー・S・ローゼンタール 著/中村義作 監修/柴田裕之 訳 ハヤカワ文庫NF ISBN978-4-15-050369-7 確率・統計に関する一般向け入門読み物。 いろいろと卑近な例を使って説明されているので、興味深く読めるのではないだろうか。興味があるならば、…

『CIAと戦後日本 保守合同・北方領土・再軍備』

有馬哲夫 著 平凡社新書 ISBN978-4-582-85530-2 公開されているCIA文書から分かる戦後政治史のいくつかのエピソードを書いた本。 一つのエピソード集といえばエピソード集なので、それで良ければ、という本か。 欠点として、個々のエピソードは、別に、驚…

『その数字が戦略を決める』

イアン・エアーズ 著/山形浩生 訳 文春新書 ISBN978-4-16-765170-1 データ分析に基づく意思決定について書かれた本。 基本的には推進派の立場から、様々な事例などが紹介されたもので、中身はありがちな海外ノンフィクション。山形訳らしく訳文は読みやすい…

『改訂版 ヨーロッパ史における戦争』

マイケル・ハワード 著/奥村房夫・奥村大作 訳 中公文庫 ISBN978-4-12-205318-2 中世後半から現代までの、ヨーロッパにおける戦争の歴史を概説した本。 別に硬いということはないが、概説は概説。いろいろと書かれているし、興味深くはあるが、読んで面白い…

『ガロアの群論 方程式はなぜ解けなかったのか』

中村亨 著 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-257684-0 ガロアの群論に関する入門書。 一応、1の三乗根のうちで1でないものを示すωくらいの他は、中学校の数学レベルから書かれているので、入門書といえば入門書。多少苦労しても良いという人なら、読んで…

『全体主義』

エンツォ・トラヴェルソ 著/柱本元彦 訳 平凡社新書 ISBN978-4-582-85522-7 全体主義という用語の歴史を粗描した本。 ひとつの概念史、といえば、そうした小史だが、特別な内容はないと思うし、分かりやすくはないし、翻訳文体で読みにくいし、で、特に薦め…

ヨーロッパにおいては、

ソ連やベルリンの壁の崩壊後、共産主義に対する幻滅が広がり、日本共産党のように共産党を冠する政党名はほとんどなくなったという。そこで、日本においては、日本共産党は何故日本共産党のままなのか、という問題がただちに出てくる訳だが、その理由につい…

『追悼 「広告」の時代』

佐野山寛太 著 洋泉社・新書y ISBN978-4-86248-544-1 著者によるエッセイ。 前半は広告論的なまとめだが、後半は著者なりの提言(地産地消生活のススメ、みたいな)になるので、そういうのが好きな人向けの本で、結局のところ、著者のエッセイと考えておく…