『天皇はなぜ万世一系なのか』

本郷和人
文春新書
ISBN978-4-16-660781-5
中世における出世について書かれたエッセイ。
評論としてはやや苦しいと思うが、歴史エッセイとしてならばそれなりのエッセイ、という本か。エッセイで良ければ読んでみても、というところ。
結論ではないにしてもテーマ的には、中世においては出世できるかどうかは世襲でほとんど決まっていた、という当たり前のものしかないので、評論として期待すると物足りないと思う。
あくまでもエッセイで良ければ、という本。
それで良ければ読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
藤原公実の子どもたちの家は、三条、西園寺、徳大寺となったが、これらの家では、名前に公と実を交互に用いた。三条実美西園寺公望等。
鎌倉幕府でも室町幕府でも、結局のところ要職は世襲で占められるようになった。足利義満がその世襲の大元である天皇位を簒奪しようとしたとは思えない。
明治維新において、初めて実務官僚を世襲ではなく才能によって登用する道が開けたが、才能と世襲との対立を和らげるのに、国家のトップである天皇世襲であることが役立った。現代でも、多く世襲で選ばれた政治家が国家試験を経て選ばれた高級官僚を批判している。