『絵はがきにされた少年』

藤原章生
集英社文庫
ISBN978-4-08-746607-2
南部アフリカに住む人々に取材したルポ。
南アフリカに派遣されていた新聞記者がアフリカ大陸の南側に住む何人かの人の等身大の姿をそのまま伝えようとしたようなルポで、人の姿を描いた軽い読み物でさくさく読めるし、日本から遠く離れた地に住む人々の話なので興味深くはあり、興味があるならば読んでみても、という本だと思う。
ただし、やや取材対象にべったりというか、複数の視座はもてていない感じがした。
差別とか貧困とかいうものとは別の視点を提供したかった、という著者の想いはあるのだろうとしても。
日本にいる読者には反対取材なんかできるわけがないのだから、そこは、著者がもう少し複数の視点から捉えた立体的な姿を提供するべきではなかっただろうか。
その点で、私としては物足りない本。
一面を描いたルポではあるのだろうから、それで良ければ、というところか。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。