2009-01-01から1年間の記事一覧

『「みんなの意見」は案外正しい』

ジェームズ・スロウィッキー 著/小高尚子 訳 角川文庫 ISBN978-4-04-297701-8 集合知に関して雑多に書かれた本。 しかし余りにも雑多すぎて、私には、本書の中軸となる筋を見つけることができなかった。 著者が何をいいたかったのか分からない、と書きたい…

『信長の天下所司代 筆頭吏僚村井貞勝』

谷口克広 著 中公新書 ISBN978-4-12-102028-4 史料に現れる村井貞勝の行動を抜書きして解説した本。 全体としては可もなく不可もなくといったところだが、かなり好事家向けの、地味でマニアックな本ではある。別につまらないとまではいわないが、これで面白…

『奪われた「三種の神器」 皇位継承の中世史』

渡邊大門 著 講談社現代新書 ISBN978-4-06-288022-0 三種の神器を巡って起こされた中世の事件史が書かれた本。 室町時代の部分は赤松氏の滅亡と再興を軸にしているので、一応の流れはあって、それなりの歴史読み物、という本か。 ただし、私は中世史はよく知…

『鑑真』

東野治之 著 岩波新書 ISBN978-4-00-431218-5 鑑真の伝記。 一応のまとまった伝記ではあるが、個人的には、著者の仏教理解については疑念を持った。 今時、小乗仏教とかを但し書きなしで使ってしまうような本は、なしなのではないだろうか。最澄の大乗戒を鑑…

『がん検診は誤解だらけ 何を選んでどう受ける』

斎藤博 著 NHK出版生活人新書 ISBN978-4-14-088306-8 ガン検診に対しての啓蒙書。 ガン検診を行い、受けることについてのメリットやその判断の仕方などが書かれたもので、分かりやすく順を追って書かれているので、啓蒙書としてまずまず良い本だと思う。…

『論理病をなおす! 処方箋としての詭弁』

香西秀信 著 ちくま新書 ISBN978-4-480-06516-2 詭弁に関して書かれた読み物。 テーマ云々は余り関係なく、読み物、と考えておけば良い本か。割と面白かったので、読み物で良ければ、読んでみても良い本だと思う。 テーマがあるとしたら、詭弁にも正しい場合…

『正倉院ガラスは何を語るか 白琉璃碗に古代世界が見える』

由水常雄 著 中公新書 ISBN978-4-12-102025-3 正倉院にあるガラス器に関して雑多に書かれた本。 類品の出土分布や、復元品の作成方法や、これらの品々が正倉院に入った過程等に関して、かなりまとまりなく、手広くばらばらに書かれた雑文集。これでも一冊の…

『これを読まずに「江戸」を語るな』

氏家幹人 著 祥伝社黄金文庫 ISBN978-4-396-31495-8 江戸読み物。 特にどうということもない江戸読み物だが、小説雑誌の連載を中心にまとめたものということで、すらすらと読める軽い読み物ではある。そうしたもので良ければ、読んでみても、という本。読み…

『平家の群像 物語から史実へ』

高橋昌明 著 岩波新書 ISBN978-4-00-431212-3 没落する平家の人々を追った本。 モチーフとしては、平家の人々を追って、平家の内部事情が一枚岩ではなかったことを描こうとしたもので、大体のところ、普通の歴史読み物、という本か。そうしたもので良ければ…

『増補 ノーベル賞経済学者の大罪』

ディアドラ・N・マクロスキー 著/赤羽隆夫 訳 ちくま学芸文庫 ISBN978-4-480-09250-2 経済学を批判した本。 現役の経済学者が書いた本だから具体的で細かくはあるが、大枠では、現実を見ていないという経済学に対するありがちな批判と同工異曲だろう。 こ…

『ぼくが葬儀屋さんになった理由』

冨安徳久 著 講談社+α文庫 ISBN978-4-06-281314-3 葬儀社を経営する著者による半自伝的フィクション。 大体のところ、半自伝的エッセイと考えておいて良いと思うが、フィクション部分も含まれているということで、ノンフィクション風フィクション、というこ…

『「環境」都市の真実 江戸の空になぜ鶴は飛んでいたのか』

根崎光男 著 講談社+α新書 ISBN978-4-06-272542-2 江戸の都市環境に関して書かれた本。 江戸を理想的な環境都市と捉える俗説に対する批判、というモチーフがあることは確かだが、最終章がそれに余り相応しくないこともあって、やや雑多な江戸読み物、と考え…

『マイクロファイナンス』

を途中で挫折した。 反市場原理主義の本。今の日本には年収200万円未満の就業者が2196万人もいる、などと煽っている訳だが、そのうちのどれだけが、主婦のパートタイマーなんだろうか。第3章まで読んだが、マイクロファイナンスそのものについては、通り一…

『組織は合理的に失敗する 日本陸軍に学ぶ不条理のメカニズム』

菊澤研宗 著 日経ビジネス人文庫 ISBN978-4-532-19511-3 太平洋戦争の日本陸軍をネタに新制度派経済学について書いたビジネス書。 本当はもうちょっと違うかもしれないが、陸軍をネタにしたビジネス書と考えておいて、大過ないだろう。 三百ページを超える割…

『歴史は「べき乗則」で動く 種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学』

マーク・ブキャナン 著 水谷淳 訳 ハヤカワ文庫 ISBN978-4-15-050358-1 べき乗則に関する科学読み物。 研究が進めばこういうことも分かってくるかもしれない、という投げっぱなしジャーマンで終わっている点からいっても、複雑系のものにありがちな科学読み…

『ヤクザが店にやってきた 暴力団と闘う飲食店オーナーの奮闘記』

宮本照夫 著 新潮文庫 ISBN978-4-10-128471-2 暴力団とのかかわりを一貫して断ってきた水商売経営者の体験エッセイ。 中身は、かなりまとまりなく書き散らかしたエッセイ集で、暴力団との渡り合い方を知りたいとか、特にこれとった目的を持って手に取るよう…

『ダーウィンの思想 人間と動物のあいだ』

内井惣七 著 岩波新書 ISBN978-4-00-431202-4 ダーウィンの思想についていくつかのことが書かれた本。 最後は、道徳を進化論的に捉える、というダーウィンが考え始めた問題を現代の知見から論じよう、というところにまで話が飛んでいて、ややまとまりには欠…

『量子テレポーテーション 瞬間移動は可能なのか?』

古澤明 著 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-257648-2 量子テレポーテーションについて書かれた本。 大体のところ入門概説で、入門概説といっても、量子力学の話であるから簡単ではないし、実際、読んでも全部は分からないのだろうと思うが(全部分かるに…

『会計学はこう考える』

友岡賛 著 ちくま新書 ISBN978-4-480-06500-1 会計学についての入門読み物。 入門読み物としては一つの入門読み物なのだろうが、くねくねとした文体で、基本的にはかなり読みにくい。 気にならないとかこういう凝った文章が好きとかいう人ならともかく、余り…

『伊25号出撃す アメリカ本土を攻撃せよ』

槇幸 著 光人社NF文庫 ISBN978-4-7698-2614-9 潜水艦の乗組員が自身の経験を綴った戦記。 基本的には坦々とした戦闘の記録で、記録としては一つの記録、という本か。 そうした記録で良ければ、という本。余り、特別の内容といえる程のものはないとは思った…

『和歌とは何か』

渡部泰明 著 岩波新書 ISBN978-4-00-431198-0 和歌とは、儀礼的な空間を作り上げ、その中で演技をするものだ、と規定した上で、そのコロラリーとして、和歌について語った本。 その規定からくるある種の帰結といえば帰結であり、発想は面白いと思ったが、た…

『カラー図解でわかるブラックホール宇宙 なんでも底なしに吸い込むのは本当か? 死んだ天体というのは事実か?』

福江純 著 ソフトバンククリエイティブ・サイエンス・アイ新書 ISBN978-4-7973-5117-0 ブラックホールに関する読み物。 オールカラーなので図版がいろいろある、という以外は、普通の天文読み物と考えて良い本だと思う。そうしたもので良ければ、読んでみて…

『水とはなにか ミクロに見たそのふるまい』

上平恒 著 講談社ブルーバックス ISBN978-4-06-257646-8 水の性質に関して書かれた本。 水の物理的化学的性質に関してあれこれとまとまって書かれているので、内容そのものは興味深いが、ただし、説明は、分かりやすくもないし、全体に眠い感じだと思う。 内…

『人の気持ちがわかる脳 利己性・利他性の脳科学』

村井俊哉 著 ちくま新書 ISBN978-4-480-06499-8 利己性、利他性に関する脳科学読み物。 全体的には特にどうということもない脳科学読み物で、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。脳科学読み物なんかはいっぱいある訳で、その中で特に本書を…

『命の値段が高すぎる! 医療の貧困』

永田宏 著 ちくま新書 ISBN978-4-480-06498-1 小泉政権以降進められている医療制度改革について書かれた本。 その方向性をざっくりと分かりやすく俯瞰したもので、全体の執筆態度は、批判というよりは冷笑に近い。 分かりやすく、面白く書かれているので、そ…

『物語 数学の歴史 正しさへの挑戦』

加藤文元 著 中公新書 ISBN978-4-12-102007-9 数学史に関する読み物。 特にこれといったものはない数学読み物で、難しいことはないが、基本的には、数学に関して色々と知っている人向けの本なのだと思う。数学に関するものを何冊か読む内の一冊なら、悪くは…

『対米交渉のすごい国 カナダ・メキシコ・NZに学ぶ』

櫻田大造 著 光文社新書 ISBN978-4-334-03510-5 カナダ、メキシコ、ニュージーランドと、アメリカとの交渉事例をいくつか書いた本。 日本と同様、アメリカの友好国であり、アメリカに比べて弱小国であるこれらの国々が、アメリカとの交渉で、いかにしてアメ…

『「朝日」ともあろうものが。』

烏賀陽弘道 著 河出文庫 ISBN978-4-309-40965-8 朝日新聞社の記者だった著者が、在職時代の経験から朝日新聞社を批判した本。 一応、内側からの報告、ではあり、それはそれで貴重なものではあるだろうから、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本…

『山口組若頭暗殺事件 利権をめぐるウラ社会の暗闘劇』

木村勝美 著 イースト・プレス 文庫ぎんが堂 ISBN978-4-7816-7003-4 山口組の若頭であった宅見勝暗殺事件に関して書かれた本。 事件の経過や、その背後等を探ったノンフィクション、ではあるのだが、事件の背景に何があったのかは、結局のところ必ずしもよく…

『奇想天外な戦争の話 信じられない戦場の出来事40話』

広田厚司 著 光人社NF文庫 ISBN978-4-7698-2607-1 スパイや謀略等、第二次世界大戦の別側面を示すいくつかのエピソードを集めた本。 別に良い本だとは思わないが、そうしたものだといえばそうしたもの、という本か。読みたければ読んでみても、というとこ…