『いじめとは何か 教室の問題、社会の問題』

森田洋司 著
中公新書
ISBN978-4-12-102066-6
いじめに関するまとめ。
前半は、いじめ問題の歴史やいじめについての研究史を簡単にまとめたもので、後半は、いじめの対策として、子どもに対する市民性教育を行ってソーシャルボンドを強くすることを考えなければいけない、と主張したもの。
後半のテーマで一冊書けば良かったのに、前半のまとめは、あまりに簡略で、意味をなしていない感じがして、全体として、中途半端な本だと私は思った。
後、いじめの国際比較で、日本は進行性のいじめが多い、としているのは、比率としてはそうなんだろうけど、多分、絶対数で見たらそうではないと思うので、ちょっと議論が強引過ぎるのではないかと考える(日本は、いじめのうち進行性のものが17.7%、いじめの被害経験率は13.9%なので、全体で約2.5%の子どもが進行性のいじめの被害にあったものと考えられる。オランダは、進行性のいじめの割合は11.7%と確かに日本よりも少ないが、いじめの被害経験が27%あるので、絶対数としては3%を超える子どもが進行性のいじめにあっているのではないかと思う。著者は、オランダは進行性タイプのいじめの被害に遭う確率が日本よりも低い、とはっきり書いているが)。
全体的に、あまり良い本だとは評価できない。
いじめに関してのまとめといえばまとめなので、他になければしょうがない、というところか。類本がどの程度あるのか、私は知らないが。
それでも良ければ、という本だろう。

以下メモ。
・いじめは、相手を囲い込むことで最大の効果を発揮するので、しばしば親密な関係の中で生まれる。
・ルールを守らない、何かができない、全体の足を引っ張る、など、善の意思からいじめが発生することもある。あるいは逆に、みんなが迷惑している、などといって、いじめの正当化に使われることもある。被害者の側も、こういういじめに遭うと、抵抗が難しくなる。
・アンケート結果によれば、教師の介入によっていじめが悪化した、ということにはなっていない。