『信長が見た戦国京都 城塞に囲まれた異貌の都』

河内将芳 著
洋泉社・歴史新書y
ISBN978-4-86248-592-2
戦国時代の京都について書かれた本。
個人的にはやや表層的という印象を受けたが、戦国時代の京都に関する一通りのまとめ、といえば、まとめなので、そうしたもので良ければ、という本か。
表層的というか、即物的というか、史料にこう書いてある、という以上のものはあまりない気がした。史料に即しているというのは、歴史学としては、強みと評価すべきなのだろうが。
即物的といっても唯物論的ということではなく、例えば、応仁の乱以降の京都について、放火や強盗等の治安の悪化によって市街地が縮小され、要塞化された、という話になっているのだが、首都の華やかさというのは政権の権威や機能と結びついているわけで、室町幕府の衰退や朝廷の困窮化が、より大きく京都市街地縮小の原因なのではなかろうか、と私ならば思う。
全体的に、史料には直接現れないような歴史要因や環境、人々の心理等について、深い捉え方はしていない気がした。
一通りのまとめではあるので、そうしたもので良ければ、というところか。
それで良ければ読んでみても、という本だろう。

メモ一点。
・戦国時代の京都は、旧来からの中心地であった下京と、室町殿を中心とした上京とに分かれ、応仁の乱以降はそれぞれ堀や木戸門を備えた城塞都市となった。