『睡眠の科学 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか』

櫻井武 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-257705-2
オレキシンを中心に睡眠について書かれた本。
おおむね、睡眠の脳科学に関する現時点でのまとめ、といった本で、別段特にどうということはないが悪くはない本だと思う。興味があるならば、読んでみても良い本。
若干読みにくいような気がしたが、具体的にどこがということはないので、気のせいだろうか。微妙に読むのに時間がかかったことは確かだが。
いろいろと面白い部分もあったし、まとめとしてはこんなものだと思う。
興味があるのなら、読んでみても良い本だろう。

以下メモ。
・眠らなくて済む動物は生存競争で有利だと思われるが、長い進化の歴史でそのような動物は生まれてこなかった。そのくらい、動物にとって睡眠は必要不可欠なものだと考えられる。
・脳幹にあるモノアミン作動性ニューロンと、脳幹の橋にあるコリン作動性ニューロンが活動することで、覚醒が維持される。ノルアドレナリンセロトニンドーパミン等のモノアミン系神経伝達物質は、広範なニューロンに持続的に作用を及ぼすので、大脳の広い範囲を活性化するのに適している。
視床下部の睡眠中枢にあるGABA作動性ニューロンは、睡眠時にこれらのニューロン、及び後述するオレキシン作動性ニューロンを抑制する。
・ノンレム睡眠時には、モノアミン作動性ニューロンもコリン作動性ニューロンも活性が低下するが、レム睡眠時には、モノアミン作動性ニューロンはさらに活性が下がるものの、コリン作動性ニューロンは活発に発火しており、コリン作動性ニューロンによって大脳の(一部の)活動が活性化される。
モノアミン作動性ニューロンは、体温調節機能にも関与しているため、レム睡眠時には体温調節機能がほとんど停止する。雪山で眠ると生命の危険がある。
視床下部外側部にあるオレキシン作動性ニューロンが、モノアミン作動性ニューロンを活性化し、覚醒を安定させている。
オレキシン作動性ニューロンは、情動を司る大脳辺縁系から多くの入力を受けており、喜びや不安があると眠れなくなるのはこのためであると考えられる。また、レプチンや脳脊髄液中のグルコースによって抑制されており、空腹時には覚醒を維持するようになっている。
・毎日決まった時間に食事を摂ると、その時間に合わせて覚醒状態が上昇する。
・ヒトは夜になると眠くなるから睡眠と体内時計に関連があることは明らかだが、その経路はまだはっきりとは分かっていない。
バンドウイルカは泳ぎながら片側の脳だけ半分ずつ眠る。渡り鳥もそのようにして眠っているのだと考えられる。