ちゃんと勉強する人向け

『今日から使える物理数学 普及版 難解な概念を便利な道具にする』
岸野正剛 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-514213-4
物理数学の副読本。
読み物ではなく副読本なので、教科書片手にきちんと勉強する人がその合間に読むような本か。そうしたもので良ければ、というもの。
読み物とか、片手間に読んでどうこう、という本ではない。
微積分の基礎からちゃんと学んで、練習問題もちゃんとやって、という人向け。
副読本としては、それなりに読みやすいし新書サイズだし、価値もあるのだと思う。
そうしたもので良ければ、という本だろう。

仮説というよりは

『海と陸をつなぐ進化論 気候変動と微生物がもたらした驚きの共進化』
須藤斎 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-513850-2
海洋性哺乳類の発達に関する著者の説を書いた本。
仮説自体は、どうにも、という感じだが、それに関連することがいろいろと書かれているので、それなりには楽しめるかもしれない。それで良ければ、という本か。
仮説は、漸新世に南極とオーストラリアが分かれると、南極の周囲を南極還流が覆うようになり、暖流が南極大陸まで届かなくなって、氷床が発達し、地球が寒冷化した、寒冷化した地球の海では、冷たい海底の水と温かい表層の水が入れ替わる湧昇が頻繁、不定期に起こるようになるが、珪藻、特にその中のキートケロス属は、栄養塩が少ない時期に休眠胞子を作り、湧昇によって栄養塩が補給されたときに素早く対応することで、この環境に適応し、海洋における一次生産者である植物プランクトンのうち、渦鞭毛藻や円石藻に代わって大いに繁栄した、珪藻が繁栄することで、珪藻を食べる動物プランクトンや、さらにそれを食べる生き物たちも繁栄したはずであり、さらにそれらを捕食するクジラやアザラシなどがこの時代に進化したのは、珪藻が繁栄したおかげである、というもの。
時代が合っているという以上の根拠はない上に、その時代が合っているかどうかもかなりあやふやで、個人的には、どうにもというところではあった。
現状では思い付きの域を出ていないと思う。
それでも良ければ、という本だろう。

あまり分かりやすい本ではない

百姓一揆
若尾政希 著
岩波新書
ISBN978-4-00-431750-0
百姓一揆が表象している近世の政治思想を探ろうとした本。
表象という、そういう分かりにくい本だし、はっきりした結論めいたものもなくグダグダしているので、あまりいい本だとは思えないが、そういうものでよければ、という本か。
百姓一揆の実態に迫った本ではなく、むしろ百姓一揆物語について書かれたもの、と考えたほうがいいが、それが主題ではない、というのが困ったところ。
そういうグダグダした本ではある。
内容的に、悪いともいえないが、よいともいえない。
ある物語類型が流行った背景にはその物語類型が象徴している思想があるのだろうから、特定の物語があるから云々、ということはあまり言えないのではという気はするが。
それでも良ければ、という本だろう。

ほぼ教科書

『はじめての解析学 微分積分から量子力学まで』
原岡喜重 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-513853-3
解析学の初心者向け教科書。
新書一冊に収まっているし数学史を踏まえた構成にもなっているので教科書というより読み物なのだろうが、私の立ち位置くらいからでは教科書との違いはほぼ分からなかった。数学好きか教科書でよければ、という本か。
数学知識のある人には教科書との違いが分かるのかもしれない。
あまり違いがないとすると、教科書のほうが理解しやすいかもしれないが。
なんというか、複素平面から説明されているのは、しょうがないし復習にもなるのだろうが、複素平面を知らない人が理解できるような内容ではないよね、という。
複素平面固有ベクトルヒルベルト空間もエルミート行列も大体同じような熱量でしか説明されていないので、メリハリがない。
複素平面を知らないまま本書を読んで理解できる天才向け、ということなんだろうか。
そうしたもので良ければ、という本だろう。

分かりにくくないかな

『独楽の科学 回転する物体はなぜ倒れないのか?』
山崎詩郎 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-513855-7
コマについて書かれた本。
電子のスピンとかブラックホールとかの名前も出てはくるが、コマに関連した科学読本というよりは本当にコマの科学的特性が書かれたものと考えたほうがいい。それで良ければ読んでみても、という本か。
説明は、分かりにくいような気がするが。
少なくとも、図の説明があまり有効になされていないと思う。
そんなに難しいことが書かれているわけではないからこれで問題にはならないかもしれないが、中高生とかには分かりにくいのではないだろうか。
それ以外は、コマについて正面から書かれた部分など、興味深くはあった。
そうしたもので良ければ、という本だろう。

以下メモ。
・回転軸が傾いたとき、重力から斜めに引っ張られることによって、回転との相互作用から歳差運動が生じる。
コマは歳差運動の回転の方向に回転している。
・コマと地面との接地点は、点ではなく丸くなっているので、歳差運動とは違う方向に摩擦力が働き、コマは立ち上がる。
・水平方向に回転していたジャイロホイールを横に倒すと、水平方向の角運動量が減るので、角運動量保存の法則に従ってジャイロホールを持っている人に水平方向に回転する力がかかる。

雑多なまとめ

『受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実』
おおたとしまさ 著
新潮新書
ISBN978-4-10-610784-9
受験や進学に関していろいろと書かれた本。
あまりまとまりはない結構雑多な本だが、コラム集と考えればこんなものか。そうしたもので良ければ、というところ。
受験生やその親には参考になることもあるのだろうと思う。
そうしたもので良ければ、という本だろう。

以下メモ。
・反抗期真っ盛りの十五歳で受験するよりは十二歳で受験したほうがいい場合があるかもしれない。
・受験日や受験回数の設定などによって偏差値を移動させることは可能だ。
・日比谷などの一部の都立高は確かに復権したが、中堅以下の都立高は下がった。
・国際的な分類をベースにした思考コードに従って、より深い思考を問う受験がなされる時代になってきている。
・男子と女子で適切な教育の進め方に違いがあるかもしれないから、男子校女子校のほうが優れている可能性はある。

現時点のまとめ

『「こころ」はいかにして生まれるのか 最新脳科学で解き明かす「情動」』
櫻井武 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-513522-8
情動がどのように発生するかという脳科学的な知見をまとめた本。
一応「こころ」をモチーフにはしているが、それほど格別なテーマがあるでもなく、最近新しい発見がいくつもあったわけでもなく、ブレイクスルーがあったわけでもなく、情動の脳科学に関する現時点のまとめ、という以上のものはない。まとめとしてはまとめなので、それでも良ければ、という本か。
脳科学についての初心者とかにはよいのではないだろうか。
この界隈は類書も多いから、探せば面白い本もありそうだが、それはそれとして。
取り立てて特別ということはないまとめ。
それでも良ければ、という本だろう。

以下メモ。
・脳は全身からフィードバックを受けているので、SFに出てくるような脳だけを純粋培養したものが思い通りに機能するかどうかには疑問がある。
・感覚の入力は認知をつかさどる大脳皮質と情動をつかさどる大脳辺縁系に別々に伝えられる。怖いものを見て、それを認識して、すくみあがった、と思っても、実際にはそれらは並列で起こっている。