『鑑真』

東野治之 著
岩波新書
ISBN978-4-00-431218-5
鑑真の伝記。
一応のまとまった伝記ではあるが、個人的には、著者の仏教理解については疑念を持った。
今時、小乗仏教とかを但し書きなしで使ってしまうような本は、なしなのではないだろうか。最澄の大乗戒を鑑真の精神を継承したもの、と解釈するのも、余りといえば余り。
歴史学者が書いた本だから伝記としては一応の伝記なのだろうが、個人的に、薦めるには二の足を踏む。
それでも良ければ、というところだが、特に薦めるような本ではないだろう。

以下メモ。
・唐では許可なく国境を越えることを禁じていたので、鑑真の来日は密出国だった。鑑真が来日に失敗した五回の内の三回は、海で遭難したのではなく、出航前にことが露見して失敗に終わったものである。
唐招提寺は、鑑真が第一線を引退して東大寺から移った寺で、東大寺で受戒した僧を更に研修させる狙いがあった。