『奪われた「三種の神器」 皇位継承の中世史』

渡邊大門 著
講談社現代新書
ISBN978-4-06-288022-0
三種の神器を巡って起こされた中世の事件史が書かれた本。
室町時代の部分は赤松氏の滅亡と再興を軸にしているので、一応の流れはあって、それなりの歴史読み物、という本か。
ただし、私は中世史はよく知らないし室町前期は全くの白紙なのでよく分からないものの、疑問に思う記述もあった。平時忠が清盛正妻の弟であったが「ゆえに高位高官を手にした」というのは、まだ解釈や表現の問題かもしれないが、平氏一門によって朝廷内の官位が独占される、というのは、どうなんだろう。少し薦めるのに二の足を踏ませる要素ではある。
それ以外は、大体のところ一応の歴史読み物と考えて良いと思う。
全体的な結論としては、儀式と先例に囚われた院政期の貴族にとって、三種の神器がないことは大問題だったが、南北朝時代三種の神器がないことが常態化し、先例にこだわることの少なくなった室町中期には、三種の神器の重要性も薄れていった、というところだろうか。
個人的に特には薦めないが、それでも良ければ読んでみても、という本だろう。