視野が狭い

『平安朝の事件簿 王朝びとの殺人・強盗・汚職
繁田信一
文春新書
ISBN978-4-16-661285-7
検非違使別当藤原公任有職故実の書を著すのに使った紙背文書から、当時の検非違使が扱った地方豪族の事件を紹介した本。
事件簿としての面白さはあるので、それで良ければ、という本か。
いろいろと足りない面も多く、格別に薦めるほどではない。
時代背景が分からないし、史料の性格が分からないし、例えば、多くの事件の中から地方豪族の係わる事件を拾いだしてきたのか地方豪族の事件が多かったのかも分からないし、事件そのものも断片的で且つ片側だけの一方的な主張しか分からない。
本書に出てくる豪族は、源平の争乱で活躍する武士たちの曽祖父の曽祖父ぐらいの年代にあたるが、源とか平とかでなく、坂上とか弓削とか凡河内とかになっているのは、流れが変わったのか公文書だからなのか。
事件簿としての面白さはあるが、結局のところあれもこれも分からず、本書をどう読んでいいか、私には分からなかった。
事件の説明に集中しすぎて、一歩引いた視線がないというか。
専門的にやっている人にはこれでいいのかもしれないが。
それで良ければ、という本だろう。