『医者が患者をだますとき』

ロバート・メンデルソン 著/弓場隆 訳
PHP文庫
ISBN978-4-569-67016-4
医療を批判した本。
書かれていることはかなりの極論で、それをわきまえていればそれなりの批判ではあると思うものの、原著の出版が1979年ということで、現在ではやや古くなってしまっているのではないかと、個人的には心配する。
(例えば私の分かった範囲だと、ピルやマンモグラフィーについての記述は、今では必ずしも当てはまらないのではないだろうか)
批判そのものは、保守的な立場からの批判で、保守的に過ぎる面もあるが、(アメリ保守主義の当然の基盤である)キリスト教の信仰が基盤にあるのかどうかは、よく分からなかった。極論であることを割り引けば、当時としてはそれなりの批判だったのだろう。
EBMは本書のような批判に応えるものだろうし、精神科の予約時間に遅れれば敵意が隠されているといわれ、早く行けば不安が渦巻いているといわれ、時間ぴったりに行けば、強迫観念が潜んでいる、と診断される、とか、医者には、服を脱ぎなさいといえば相手がその通りにする凄い力がある、とか、結構面白い記述もあったので、古いもので良ければ悪くない本だとしておきたいが、本書のようなもので古いというのは、古いということが分からない人にとっては特に、致命的といって良いのではないかと思う。
私はこういう本は好きだが、今日では古くなっていると思うので、薦める程ではない。
それでも良ければ、というところだろう。
以下メモ。
ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、適応症が不安・疲労抑うつ等々であり、副作用が不安・疲労抑うつ等々である。
・医学の世界に妥協という概念はなく、権力闘争も熾烈である。
・医者にとって患者は、医学部時代に刷り込まれた失敗を招くテストのような問題を突きつけてくる厄介な存在である。