『日本語の歴史』

山口仲美 著
岩波新書
ISBN4-00-431018-0
日本語の歴史に関していくつかのことが書かれたエッセイ。
概説ではなく、いくつかの論点に焦点を絞ったエッセイ的な読み物、といった感じの本で、エッセイ的であるだけに全体的なテーマとか統一感とかには乏しいが、大体のところ、特別ではないがそう悪いこともない、という本ではないかと思う。
私にもそれなりには面白かったし、私よりも文学趣味のある人なら(『源氏物語』とか『平家物語』とか)、多分もっと楽しめるのだろう。
そういうもので良ければ読んでみても、という本か。
それ以上のものではないが、エッセイ雑学本の類で良ければこんなものだと思うので、興味があるのならば、読んでみても、というところだろう。
以下メモ。
・古代の敬語は絶対敬語だったので、天皇(大王)は自分自身に対して敬語を用いた。
・カタカナは漢文訓読用に漢字の補助として用いたので、小さく済ませるため元の漢字の一部を使って簡略化している。
平安時代にできたひらがな文は、日本語の話し言葉をストレートに文章表現するもので、それ故に王朝文学が花開いた。
・中世の日本語は、論理的になって、助詞を使って主語や目的語をはっきりさせるようになったため、曖昧な構造の中でこそ使われていた係り結びが使われなくなった。
尾崎紅葉が完成させた「である」調が、客観的な物事の説明に適した表現だったため、言文一致体の決定打となった(「〜だ」「〜です」「〜であります」等と比べて、「〜である」は、江戸時代には講釈等で使われていた、公の場で用いられる客観的な語感のある言葉だった)。