『学歴分断社会』

吉川徹 著
ちくま新書
ISBN978-4-480-06479-0
現代日本における格差について、その中に大卒と高卒との差がある、ということが説かれた本。
現代日本社会に対する一つの視点といえば視点だろうから、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
ただし、様々な視点の中で、何故大卒と高卒の差が重要なのか、という点は、必ずしも明瞭ではなかった。格差論としては、大卒と高卒という格差があるから格差があるのだ、というのは、ある種のトートロジーに堕してしまう訳で、(著者の考えとしては、寧ろ格差があることは強調していないのだとしても)トートロジーを超えるだけの重要性の指摘や論理展開が、本書には必要だったのではないだろうか。それは専門書で書いたからそっちを参照してくれ、ということなのかもしれないが。
あくまで、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本。社会評論系のエッセイとしては、特にだめということはないと思う。
興味があるならば、読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・親の経済格差が子供の学歴の差を生む、というような議論は、拝金主義的であり、その背後にある文化資本の差等の様々な要因を排除してしまう。
・専業主婦となった母親の大卒という学歴は、実現されなかった可能性として、子供のより高い学歴を生む力になる。