『感染症の中国史 公衆衛生と東アジア』

飯島渉 著
中公新書
ISBN978-4-12-102034-5
近代中国(及び台湾)における感染症の歴史について、いくつかのことが書かれた本。
アジェンダ(問題設定)としては面白いが、余りまとまりが良くなく、いくつかのことがバラバラに書かれているだけ、という印象を私は受けた。
コレラの感染を防ぐための上下水道の整備が大きな政府への道となった、とか、公衆衛生によって(植民)政府による個人管理が進んだ、とか、感染症と差別のかかわりとか(貧しい人や移民に、感染症に罹る人は多かった)、アジェンダとしては面白そうな話題がいくつもあるのに、それがテーマとしてまでは高められていない。
テーマにしきれないなら完全な編年体にでもしてしまえば歴史書として楽しめるものになっただろうに、現状ではいくつかのコラムを集めただけという感じではあり、ちょっと惜しい。
アジェンダとしては面白いので、それでも良ければ、というところか。出来そのものは余り良い本ではないと思う。
楽しめる人には楽しめるだろうが、広く薦める程ではない。
それでも良ければ、読んでみても、という本だろう。