『幕臣たちの明治維新』

安藤優一郎 著
講談社現代新書
ISBN978-4-06-287931-6
明治維新後の旧幕臣たちの動向に関していくつかのことが書かれた本。
別にそれなりの読み物といえば読み物だが、私としては、特に面白い、といえる程の本でもなかった。
その理由は、一つは、個々のばらばらな事例の寄せ集めで、余りまとまりがないこと。もう一つは、テーマとしては、旧幕臣は明治政府を嫌って、新聞による批判や、西南戦争での西郷の応援や、自由民権運動や、江戸時代の回顧・顕彰を行った、という話になっていくのだが、これが別に当たり前すぎて、驚きがないこと。
余り先行研究はないみたいだから、まとまりがないのも仕方がなくはあるかもしれないが、それならば、本書でも随所に出てくる幕臣山本政恒の一代記の紹介、という形に完全にしてしまった方が、良かったのではないだろうか(たいしたエピソードがなかったので、本書のような形にしたのかもしれないが)。
読み物としてはっきり悪いとまではいえないが、別に良くもない本だと思う。
それでも良ければ、というところだろう。
以下メモ。
・俸禄米は、顕職の者に上等の米があてがわれ、身分の低い者には古米等を配った。
・維新後の士族授産として、牧場経営を試みる者は多く、その代用として、ウサギを飼うことも政府推奨の下で流行したが、ウサギに大きな需要がある訳もなく、かえって窮乏を招いただけに終わった。