『殺人ウイルスの謎に迫る!』

畑中正一 著
ソフトバンク クリエイティブ サイエンス・アイ新書
ISBN978-4-7973-4976-4
ウイルスに関する入門概説書。
余り深い内容や面白い話はないが、入門書としては、こんなもの、という本か。
図表の説明の多くが、本文をピックアップしたものになっているのだが、それを、重要なことが二度書かれていて分かりやすい、と思える人向き。何で二度書くんだ? 何で二度書くんだ? と思ってしまう人には、向いてないだろう。
後、全体的に説明にキレがない印象は受ける。例えば、O157が牛に病気をもたらさないのは、溶原化(バクテリオファージが菌の中に共存)しているからなのか、バクテリオファージが外に出ても、感染するための受容体を牛の細胞が持たないためなのか、とか(あるいは、外に出ても感染できる受容体がないから、溶原化しているのかもしれないが)。生ワクチンと不活化ワクチンの違いとか、インターフェロンそのものがウイルスを抑えるのか、インターフェロンはマクロファージやNK細胞を刺激するだけなのか、とか、どうも細かいところを追おうとすると、余りよく分からない本になる気がする。肺の進化の説明も少し変だ。
ただ、入門概説で良ければ、一応のものはあるだろう。重要なことが二度書かれているので、この方が分かりやすい、という人には、良いのではないだろうか。
入門書で良ければ、読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・ポリオウイルスには、1型2型3型とあり、2型があると1型と3型の増殖が抑えられるため、ポリオワクチンは2度接種する必要がある。1回目で2型のウイルスに対する免疫を作り、2回目で1型と3型に対する免疫を作る。
・細菌に感染するウイルスをバクテリオファージといい、O157やコレラ菌赤痢菌等の毒素の正体は、これらバクテリオファージのウイルスたんぱく質である(だから、細胞に侵入して破壊する力を持っている)。かつて赤痢菌にいたバクテリオファージが、大腸菌に感染して、O157になったと考えられている。
大腸菌は、表面にあるO抗原とべん毛にあるH抗原で分類され、病原性大腸菌O157の正式名はO157−H7である。
・ウイルスに寄生するサテライトRNAというものもある。