リベットの実験から出るところはない

『未来は決まっており、自分の意志など存在しない 心理学的決定論
妹尾武治 著
光文社新書
ISBN978-4-334-04529-6
リベットの実験(脳をモニターしていると自分が決めたよりも早く神経細胞に信号が出るというあれ)が示唆する心理学的決定論について、その周囲の話題をあれこれ記した本。
リベットの実験を敷衍して新しい理論を構築したというよりも、思想や芸術などから似たような発想を集めたもので、それで良ければ、という本か。
リベットの実験について知らないわけではなかった私としては、あまりそこから出るものはないなあという印象。
読み物として、これはこれという感じではあるのかもしれないが。
全体として「ものぐさ精神分析」みたいな感じ。あれはあれで面白いと思うので、読み物としてはありか。
それで良ければ、という本だろう。

以下メモ
・大嵐の日に車で避難をしていると、バス停に老人、友人、好みの異性の三人が取り残されていた、車の席が一つしか空いていないとき、あなたならどうする、という問題に対して、友人に車を貸して老人を連れて行ってもらい自分は好みの異性と一緒に過ごす、というのがサイコパス的に正しい回答である。
・意識は情報と関係がある。
赤い物体、甘い香りのする物体、から、リンゴを導き出すのが意識となる。
・時計を見たときに秒針が止まって見える現象をクロノスタシスという。
視線を激しく動かしたとき、ぶれているものを認識してもしょうがないので、網膜情報は意識に上らない。視線が止まったときに初めて上る。このとき、意識に上っていなかった時間もそれを見ていたように錯覚するので、時計の秒針などは止まって見える。