『棋士とAI アルファ碁から始まった未来』

王銘エン
岩波新書
ISBN978-4-00-431731-2
プロ棋士がアルファ碁やAIについて考察したエッセイ。
結構突っ込んで書かれた本で、それゆえの欠点もあるが、個人的には面白かったので、興味がある人にはお薦めしたい。
割とプロ棋士に語ってもらいたいと思うようなところが書いてあるし、プロ棋士がここまで突っ込めば十分、という本ではないだろうか。
突っ込んでいるので、勇み足はあるだろう。
碁とAIの両方をある程度知っていないと楽しめないだろうと思うが、これも突っ込んで書いているからか。
日本語がたどたどしいところが若干あるのは、ライターを使っていないということなのだろうか。エヌビディアとか書かれると新しいメーカができたのかと思ってしまった。
このようにいろいろと欠点もあるが、それを補うくらいに興味深いことも書いてある。
十分な本だろう。
興味があるならばお薦めしたい。

以下メモ。
・AIは、形勢が悪くなるとどうやっても点数がよくならないため、単に自分が読む手数より先に破局を引き延ばすだけのもっと悪い手を打つことがある。
・アルファ碁は部分的な読みを行うようにはできていない。全局的最終的な勝利確率を計算している。人間は部分を組み合わせてストーリーを作るが、アルファ碁にはそれがない。
・人間は作品の背後に作者の思想を読むが、AIが作る作品に背後はない。
・効率がよい、上手い、といった価値はAIが人間を簡単に凌駕するだろう。上手く似せることのできる写真が登場して絵が他のフィールドに進んだように、方向性を考えなければならない。