『量子革命 アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突』

マンジット・クマール 著/青木薫
新潮文庫
ISBN978-4-10-220081-0
量子の発見からコペンハーゲン解釈の覇道までを記した量子力学に関する科学史読み物。
もう少し踏み込んでいえば、コペンハーゲン解釈が絶対視されなくなった現代の視点から描いた量子力学発展の一側面史、というところか。
一側面史としては面白かったので、それでよければ、という本。
ただし、量子力学を知らない人にとって、いい本であるかどうかは少し疑問に思う。
不確定性原理波動方程式の後はコペンハーゲン解釈にのみ焦点が移ってしまうし、量子力学そのものの知識についてあまり過剰な期待はすべきでない。
量子力学についてすでに知っているという人なら、そこそこというところ。
現代なら中学高校で習う原子核などのことがまだ十分には分かっていない中、現代でも大学以降の専門家たちが取り組むような量子力学を物理学者たちが原子の解明と歩みを同じくしながら試行錯誤して作り上げていく様は、科学史ならではの視点として興味深く読むことができた。
そうしたものでよければ、という本だろう。