『宇宙背景放射 「ビッグバン以前」の痕跡を探る』

羽澄昌史 著
集英社新書
ISBN978-4-08-720807-8
著者が観測しようとしている宇宙背景放射の中のBモード偏光について書かれた本。
著者が自らの研究について紹介した読み物で、読み物としては悪くない本か。
解説書というよりは読み物なので、細かいところをかっちりと理解するには足りないが、その分読みやすくはある。
大まかに把握する程度であればこんなものかもしれない。
興味があるなら読んでみてもよい本だろう。

以下メモ。
・インフレーション時の宇宙にも空間的に量子的なゆらぎがあったと考えられるが、そのゆらぎは急膨張によって引き伸ばされて凍りつき、インフレーション終了後にミクロ的なゆらぎからマクロの波となる。こうして、インフレーションによって原始重力波ができると理論上予測される。
・光が反射して観測者の方に向かってくるとき、観測者の方向に振動している波はカットされるので、その光には偏光が生じている。
周囲から反射元に入ってくる光の量が均一ならば相殺されて偏光はなくなるが、光の量の多いところと少ないところとがあれば、偏光が観測される。
重力波は空間を伸び縮みさせながら進むので、伸びたところの光の量が少なく、縮んだところからの光の量が多くなって、偏光を生じさせる。
原始重力波は、宇宙背景放射の中に特徴的な渦まき状の偏光であるBモード偏光を生じさせたと予測されている。