『宇宙論入門 誕生から未来へ』

佐藤勝彦
岩波新書
ISBN978-4-00-431161-4
宇宙論に関する入門書。
余り充実した感はないが、小著の入門書としては、それなりの入門書、という本か。小著の入門書で良ければ、読んでみても、という本。
小説風の出だしは余り読みやすくはなく、小著だし入門書だから仕方がない面はあるのだろうが、湯川秀樹パイ中間子を提唱した、みたいな記述があるのも、私としてはマイナス点だと思う。
全体に、特に良い点はなく、やや欠点が多い本か。それでも、小著の入門書としては、そこそこ、こんなもの、という本だと思う。
興味があるならば、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・インフレーション理論は、素粒子の統一理論に基づいて、できあがった。力が別々の力になる時に起こる真空の相転移が、宇宙の膨張を引き起こす。
・インフレーション中における真空のエネルギー密度の量子論的なゆらぎが、宇宙の構造の種になったと考えられる。
・インフレーションの相転移が、過冷却が起こる一次の相転移であれば、相転移を起こしていないところと起こしているところとで、重層的に宇宙が発生し得る。
近年は、ビッグバンのような単一の宇宙の発生ではなく、ブレーン宇宙論等、こうした、宇宙の無限の発生を考えるマルチバースがブームである。
・真空のエネルギーを考えるインフレーション理論では、体積がゼロならば真空のエネルギーもゼロになるから、ゼロ地点における物理法則が崩壊せず、特異点ではないところから宇宙が出発できる。
ただし、この宇宙が収縮する場合、エントロピーが発生しており、放射エネルギーがゼロにならないので、ビッグクランチには特異点ができる。
・現在の宇宙は加速膨張していると観測されており、真空のエネルギー(=暗黒エネルギー)を使った第二のインフレーションを起こしている、とも考えられる。