『伊達政宗の密使 慶長遣欧使節団の隠された使命』

大泉光一 著
洋泉社・歴史新書y
ISBN978-4-86248-671-4
伊達政宗が派遣した支倉常長ら遣欧使節団に関して書かれた本。
基本的に、日本語が下手、もしくは論理的思考ができていない、私の受けた印象では多分その両方のために、あまり読める本にはなっていないと思う。
例えば、著者は政宗が遣欧使節団を派遣した目的をキリスト教徒やスペインの力を借りて倒幕を行うためであったと説くのだが、イエスズ会士ジェロニモ・デ・アンジェリスの書簡がそれを証するものであると著者が考えているのか否か、私にはよく読み取れなかった。
あと、天正少年使節団について書かれている部分のすぐ後に慶長遣欧使節団のことが書かれていて、主語が分かりにくい部分がある、とか。
ヨーロッパやメキシコに残されている史料がメインであるのはいいが、著者は日本の事情にはあまり詳しくないようにも見受けられた。伊達政宗の書状が詳しいことは使節から聞けという内容になっていることを、著者は倒幕という真の目的を隠蔽するためのもの、と解釈しているが、戦国時代の書状によくある一般的形式なのではないかと思う。
殉教者が火刑されたというのは、異端者を火刑に処すヨーロッパ的なバイアスがかかっているような気がするが、日本側の史料に基づいているのだろうか。
全体的に、どうもとらえどころのない本で、読める本になっていると私には思えなかった。
あまり薦めるような本ではない。