『前頭葉は脳の社長さん? 意思決定とホムンクルス問題』

坂井克之 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-257546-1
前頭前野の機能や意思との関係について書かれた本。
基本的に、一般向けの脳科学の本、と考えて間違いないが、常識をひっくり返すような派手な空中戦を演じたものではなく、地道に研究結果等を報告した本。
地に足のついた、結構良い本ではないだろうか。
所々で内容をまとめてあるので、分かりやすくもあるだろう(しかし論文の書き方とかだと、大抵は、章毎節毎に内容を簡潔にまとめたものを書け、となっていると思うのだが、一般向けの本ではその原則が多くの場合守られないのは、何故だろう。著者の主観的には、既に簡潔にまとめたものが本文、だからなのだろうか)
他に良い点としては、内容とは余り関係のないくだらないギャグがあって、個人的には読み物として読みやすいと思ったが、ただ見方を変えれば、ただのオヤジギャグかもしれない。
全体的には、良い本だと私は思う。興味があるならば、購読しても良いだろう。
以下メモ。
・外側前頭前野は作業記憶の保持、底部前頭前野は報酬情報の処理、内側前頭前野は葛藤の調整や、心の理論等の社会的な感情に関係している、と考えられている。
・これらの機能は、その領域がどこからの入力を受け、どこに出力をしているか、ということに多く依存している。外側前頭前野でも、空間情報を処理する頭頂葉と接続している背外側(はいがいそく)前頭前野は、ものがどこにあるかを短期間記憶する時に活動し、物体情報を処理する側頭葉と接続している腹外側前頭前野には、図形や顔を覚えている時に活動する神経がある。底部前頭前野は、味覚や嗅覚を司る感覚領域や扁桃体から入力を受け、底部前頭前野や内側前頭前野が出力する帯状回運動野は、細かな運動制御は行わず、「いけ」とか「やめとけ」とかの簡単な信号を出すらしい。
・意思決定を行う時、神経は、感覚領域→前頭前野→運動領域の順に活動するのではなく、それぞれの活動が同時平行的に増大していく。決定は、特定の領域、特定の神経で起こるのではなく、多くの領域にまたがった複数の神経で同時平行的に起こるらしい。