『百年前の私たち 雑書から見る男と女』

石原千秋
講談社現代新書
ISBN978-4-06-149882-2
明治末から大正にかけての通俗書が語る言説に関して好き勝手に書かれたエッセイ。
おおざっぱにいうと、前半が、夏目漱石が直接対象とした読者が当時どのような社会的通念の中に置かれていたか、という話、後半が、女性解放的な立場から、因習的な当時の考えをあざけったもので、この両者の組み合わせみたいな本。
その割りに、立派な本を書き上げた、みたいなあとがきになっていて気持ちが悪いが、著者の主観的にはともかく、実際はそういう本だと思う。
だから、著者と政治的な立ち位置を同じくして夏目漱石の小説にも興味がある、という人には、きっと面白く読めるのだろう。そういうものが良ければ、読んでみても、という本。
私は、漱石の小説に格別の興味はないし、それ程面白くもなかったので多分著者と政治的な立ち位置もどこか異なるのだと思う。
好きな人だけ読んでいて下さい、という本。後はご勝手に、というところだろう。
以下メモ。
結核は上等な病としてイメージされていた。
・近代において、性欲は抑圧され、隠されるものとなり、その人の性を語る言説はその人の真実を語る言説となった。