『歴史入門』

フェルナン・ブローデル 著/金塚貞文 訳
中公文庫
ISBN978-4-12-205231-4
ブローデルが講演を元にまとめた本。
『物質文明・経済・資本主義』のアンチョコ本、といえばアンチョコ本だが、多分余りそういう風には考えない方が良いと思う。私は読んだことがないので、あるいはこういう本なのかもしれないが。
大体のところ、中世から近代のヨーロッパ経済史に関して徒然に思ったことを言ってみました、という程度の本。著者が何を言いたかったのかは、私にはほとんど分からなかった。結論的には、資本主義の背後には市場経済があり市場経済の背後には物質生活がある、というところか。
全体に、難しくて何いってっか分かんない文章が良い言説である、という例のアレ。多分、原文もたいがいなのだろう。だからといって翻訳が悪くないとも言い切れないが。訳注でバングラデシュのことを東パキスタンと書いているのは、原著の出版でさえ1976年なのに、いつの時代を生きているのだろう。
そうしたもので良ければ、というところだが、余り特別といえる内容はないと思う。小著なので簡便なアンチョコとして、という考えだと、失敗する。
特には薦めないので、それでも良ければ、という本だろう。

以下メモ。
・資本主義が発達するには、ブルジョアジーの家系が何世代かに渡って富を蓄積できるだけの平穏な期間が必要だ。
・資本主義は独占に依存している。