『ミッション・スクール あこがれの園』

佐藤八寿子
中公新書
ISBN4-12-101864-8
近代日本におけるミッション・スクールというイメージの成立とその変容を追った本。
余り質が良いとは思わないが、ありがちな教育社会史の一研究だといえばそういうものではあるので、そうしたもので良ければ読んでみても、という本か。
いくつかの論考をまとめたせいか全体としての筋が見えないこと、リスペクタビリティ、ファム・ファタル等といった(横文字の)分析概念が、いかにも借り物っぽく感じられること、ミッションスクールの両義性のような本来結論に直結する部分が消化不良のように思われること、それらの結果として、いいたいことがかなり曖昧で分かり辛く、私に理解できた部分は結局既存の主張の繰り返しでしかないこと、などから、私には余り質の良い研究だとは思えなかった。
『グロテスクな教養』といっていることがかなり被っていて、どういう違いがあるのか私にはよく分からなかったので、これなら『グロテスクな教養』の方が良いのではないか、と思ったが、読書ノートを読み返してみるとあの本もあんまり誉めてないな。読む順番が逆なら、逆の評価になるのかもしれない。
http://d.hatena.ne.jp/sarasate/20050705
いずれにしても、駄目という程、悪くはないが、薦める程、良くもない本だと思う。
読みたければ止める程ではないが、特に良い本ではないと私は考える。