『オルガスムスのウソ』

ロルフ・ゲーデン 著 赤根洋子 訳
文春文庫
ISBN4-16-765160-2
主としてオルガスムスについて書かれた性科学に関する雑学読み物。
大体のところ、科学ライターが手堅くまとめた書、といった感じの本で、雑学読み物で良ければまずまず無難なもの、という本か。悪くはないので、興味があれば読んでみても、というところではないだろうか。
敢えて問題点を挙げれば、オルガスムスそのものについては、研究がないせいなのか、それがどういうものなのか、余り深く考察されていないという感じは受けた(もっとも、「これまでに捕捉された測定値の中で、セックスの快楽と関連があると認められたものはほんのわずかしかない」らしい)。訳者は女性のオルガスムスの方が男性のオルガスムスよりも強い、という俗説を著者が強く切り捨ててない点に不満があるようだが、そういうのも、この点に関連があるのではないだろうか。著者はオルガスムスの快感を言挙げするばかりだが、実際のオルガスムスの快楽は、必ずしも常にそう強いものばかりでもないのではないかと思う。(この点については後述)
しかし、これはどちらかといえば小さな傷だろうから、全体としてはまずまずの雑学本ではないかと思う。手堅く無難にまとめてあると評価して良いのではないだろうか。
興味があるのならば、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・動物のメスにオルガスムスがあるという明白な証拠は殆どない。
・脳の中で、欲求を感じる中枢と実際に快楽を感じる中枢とは別にあるらしい。
・女性のオルガスムスによって精液が吸い上げられる、という説は科学的に正しくない。女性のオルガスムスが存在するのは何故かという問題に今のところ定説はないが、結局のところ、男性のオルガスムスの副産物であると思われる。女性のオルガスムスも、男性のオルガスムスに殆ど同一であり、それは主にクリトリスへの刺激によって生じる。
・どうすれば感じるかを男性がベッドの中で問うことは、しばしば女性を脅迫することにしかならず、不適切である。