『江戸の教育力』

高橋敏 著
ちくま新書
ISBN978-4-480-06398-4
寺子屋等、江戸時代後半の教育事情について書かれた本。
現代の教育をけなし、江戸時代の教育を言挙げするモチーフに強く彩られた本ではあるが、後は、江戸時代の教育事情に関していくつかのことが書かれた雑学読み物、といったものか。
礼賛する分マイナス面には目が行き届いていないだろうし、本書で描かれているような教育事情は、上・中層の農民(のおそらく多くは男子)のもので、それ以外の階層がどうだったのかという問題も残るが、雑学読み物で扱われる事例としては、一応こんなもの、という本だと思う。
特別なものでもないし、江戸時代に興味のない人が特に、という本でもないが(例えば、本書に記されている年齢は基本的にすべて数えだと思うが、別にそういう注意書はないし、金銀銭の交換レートの計算方法が書かれた引用部分でも、そのことに対する説明はない)、別に悪いという程でもない。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
メモ1点。
儒学漢籍にルビと訳注をつけた経典余師が、江戸時代後期の人々の儒学受容に大きな力となった。