『下流社会 新たな階層集団の出現』

三浦展
光文社新書
ISBN4-334-03321-0
現在日本の下流階層の人たちがどんな人々であるかをアンケート調査から探った本。
全体的に、アンケート調査を話のネタに好き勝手なことをがたがたといっている本だと考えておけば、間違いはない。ありがちなマーケティング調査報告書みたいな感じの本。この手の調査は先入観によってある程度どうにでもなるだろうし、それ以上のものであるかどうかは、私にはよく分からないが。
それなりに面白い部分もあったので、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
変なキャプションが付いていたり、結局のところは、懸命に働いて上の階層に昇るのをよしとするミドルクラス的な価値観からのみ書かれているという問題点はある。
(↑と、本書冒頭の下流度チェックに殆どあてはまった下流民の私が申しておく)
大体の内容としては、現在、日本の下流に属する人は、生活に困窮している訳ではないが、意欲を持たず楽に生きようとする人々で、コミュニケーション能力が低く、パソコン・インターネット、音楽鑑賞、テレビゲームといった内向的なものを趣味とし、個性や自分らしさを尊重する人である、ということは、つまり、オタクってことなんだろうか。
以下メモ。
・これまでの日本企業は、中流化社会の中でそれにあった商品を送り出してきたが、階層化が進めば、富裕層向けの高級商品を提供する必要が出てくるだろう(例えばレクサスのような)。
団塊の世代では、自分の属する階層が上、中の上と答えた人は、下、中の下と答えた人に比べ、自由に自分らしく生きるという人生観を持っていることが多いが、団塊ジュニアの世代になると、これが逆転し、自分の属する階層が下、中の下と答えた人の方が、自由に自分らしく生きるという人生観を持っている。
団塊の世代オピニオンリーダー達が唱えた個性や自分らしさという理念が、社会の下の方にまで広がっていったことが考えられる。
団塊ジュニア世代の男性では、パソコン・インターネットを趣味として選択肢の中から回答した人は、自分の属する階層が上、中の上と答えた人では75%、中の中と答えた人では85%、下、中の下と答えた人では95%だった。階層意識が上の方の人程多かった趣味は、旅行・レジャー、スキー、サイクリング、ゴルフといった活動的な趣味であり、読書でさえ、下の方の回答が多い。
団塊ジュニアの女性では、パソコン・インターネットに階層意識での差はなく、読書を趣味と回答した人は階層意識が上の方の人ほど多い。ただし、女性でもそれより上の世代も含めた郊外に住む低学歴・低収入のクラスタでは、パソコン・インターネットを趣味とした人が90%を越える)