保守的社会科学方法論

『経済社会の学び方 健全な懐疑の目を養う』
猪木武徳
中公新書
ISBN978-4-12-102659-0
保守的な立場から書かれた社会科学方法論的なエッセイ。
そうしたもので良ければ、という本か。
健全な懐疑の目を養う、という副題のように、健全な懐疑の目を持つべき事例を紹介したもの、とはいえるが、むしろ、健全な懐疑の目を養え、という著者の主張が書かれたもの、と捉えるべきだろう。
人間の知性は完璧ではない、という意味で穏健な保守思想エッセイであり、人間理性による変革を目指す進歩派にはまた別の思想があるだろうとは思う。
これはこれでそうしたもので、そうしたもので良ければ、という本。
私としては、大学の経済学の試験で蜘蛛の巣理論を説明せよという問題が出て、なんだか全然分からなかったのだが、本書で解答を知れたので、読む価値はあった。
そうしたもので良ければ読んでみてもいい本だろう。

以下メモ
・例えば、ある年にコメが不作で値段が上がったりすると、翌年は作付けが増え、供給が増えて値段が下がるだろう。その次の年には、作付けが減って供給が減り、値段が上がる。
このように、需給曲線から決まるモノの値段は、実際には乱高下しながらクモが巣を作るときのようにグルグルと回る、というモデルを蜘蛛の巣サイクルという。