仮説紹介

『ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ』
マーク・ チャンギジー著/柴田裕之 訳
ハヤカワ文庫
ISBN978-4-15-050555-4
ヒトの視覚に関する著者の仮説を四つ書いた本。
仮説を書いたものとしては、面白かった。そうしたもので良ければ、という本か。
四つの仮説は、次の通り。
・人間(あるいはヒトに近い霊長類)の色覚は顔色を見て血行や酸素飽和度などを識別するために進化した。
・ヒトの左右二つの目は、葉の茂った森の中でその隙間から一部でも見えたものを再構築するために前面を向いている。
・脳で視野を認識するにはある程度の時間がかかるため、例えば近づいてくるモノは大きく見えるようになっている。脳で視覚情報を処理している間に実際にモノは近づいて大きく見えるようになっているはずだから。近づいてくるように見えて実際には近づいてこないと錯視が起こる。
・ヒトの目は様々な部分から段階を経て全体を解釈するようにできている。文字も、様々な部分から段階を経て意味のある言葉になるのであり、文字を構成する様々な部分という要素は、自然界にあるヒトが見慣れた様々な部分の要素と相似したものとなる。
こうした仮説が紹介された本である。
仮説の紹介以外のものはあまりなく、著者の仮説を紹介したもの。
それで良ければ、という本だろう。