半自伝的エッセイ。ではないが

『1971年の悪霊』
堀井憲一郎
角川新書
ISBN978-4-04-082043-9
1970年代初めにおけるカウンターカルチャーとしての左翼的気分を当時中学生だった著者が書き留めた本。
その悪霊が現在までたたっている、というのがタイトルや序章や最終章のテーマではあるが、あまりそういう本とは考えないほうがいいと思う。むしろ、半自伝的エッセイで良ければ、という本か。
本書が必ずしも半自伝的エッセイというわけではないが、当たらずといえども遠からずといったところではある。
それも、転向した元左翼シンパによる左翼的気分批判の本。
ところどころ、読み飛ばしてしまいそうなところに面白い論考がいろいろあったので、私としては面白かった。
それで良ければ、という本だろう。

以下メモ。
・名もなく貧しい若者は自己犠牲くらいしか差し出すものはない。
・70年代初頭の学生運動も、特攻した40年代の若者と通ずるまじめな思想であり、それを吹き飛ばしたものとして軽薄なバブル文化は再評価されてよいのではないか。
・若くして死んでしまってもいいと考えていた者が生き延びたのなら、70歳のロッカーがかっこいいなどと言わずに、生き延びたことをもっと考えたほうがいい。