『近代中国史』

岡本隆司
ちくま新書
ISBN978-4-480-06724-1
現代中国において病根となるような近代中国の経済社会構造を説明した本。
図式的で分かりやすくはあるから、そうしたものでよければ読んでみても、という本か。
図式的すぎて、ちょっと大丈夫かという気はしないでもないが。少なくとも一面的ではあるのだろうと思う。
本書に書かれているような近代の構造は、表面的にはある程度克服されているわけで、話として分からなくはないし日本の状況を鑑みればそういうこともあるのだろうとは思うものの、本当に現代中国において近代の構造が問題になっているかどうかは、議論の余地があるだろう。
後は、そうしたものでよければ、というところか。
興味があるならば読んでみてもという本だろう。

以下メモ。
・近代の中国では、官と民、士と庶の分裂の中、国による統制は普通の人までは及ばなかった。
一般の庶民が身を守り、安全に生活するには、様々な中間組織を作ってそれに頼るより他になかったが、そうした組織はしばしば非合法であり、反乱や社会騒乱の元となった。
・中間組織は地域によった比較的小規模なものであり、それを越えた経済のつながりや資本の蓄積は行われない。
・地域経済をつなぐのは、外国通貨であるドル銀貨だった。
・十九世紀末に茶と絹に代わって大豆や綿花などが主要輸出品になると、それぞれの生産地域が直接に外国と交易するようになり、それが軍閥の基盤となった。
中国共産党は土地革命によって在地に根を下ろし、資本主義世界との関係を断つことによって国内経済を統一した。