『医薬品クライシス 78兆円市場の激震』

佐藤健太郎
新潮新書
ISBN978-4-10-610348-3
医薬品の開発研究者であった著者が、医薬開発を巡る業界のありさまなどについて書いた本。
タイトルはクライシスとなっているが、業界の危機について書かれているのは第五章だけで、別段たいした分析もなされていないので、全体としては、医薬品の開発研究者が医薬開発を巡るあれこれについて書いたコラム、と考えておいた方が良い。
個人的には、かなりポジショントーク的というか、著者の視野が狭いとは思ったが、ある研究開発者にそう見えることは確かなのだろうから、そうしたもので良ければ、という本か。
私とは立ち位置が違いすぎるのかもしれないが、もう少し違う角度から見れないか、とは思った。例えば、タミフルの副作用で危険を煽ったマスコミを批判しているのに、自身はジェネリック医薬の危険性を煽っている、とか。後、医薬品の効能を過大に見積もりすぎだろうとも思う。
私としては、業界の危機を分析している訳でもないし、研究開発の実際を描いているのでもないし、ポジショントーク的で、特に薦めるような本ではない。
医薬品の開発研究者が医薬業界について書いた本、といえば、そういうものではあるので、それでも良ければ、というところだろう。