『イランの核問題』

テレーズ・デルペシュ 著/早良哲夫 訳
集英社新書
ISBN978-4-08-720441-4
イランの核開発問題について、関係各国の利害や立ち位置等がまとめられたレポート。
イランの核開発を強く懸念する立場からのまとめで、その立場からのまとめとしては、多分内容的には一応のまとめではあるのだろうが、余りすっきりとはまとまっておらず、良い本だとは評価できない。
(親イスラエル的な立場から、イランに反対しているようにも感じたが、訳者あとがきによれば、ヨーロッパでは本書程度のイスラエル擁護は当然のものであるらしい)
それぞれの国別のスタンスが数字を付けたいくつかの項目にまとめられているのだが、その項目の割り振り方や項目間の関係が、論理的にきっちり説明付けられていない感じがした。
例えば、核開発によってイランは政治的に何を得られるか、ということが書かれているはずの項目は、挙げられている四つの狙いの内、核の平和利用の権利を訴えることで第三世界の支持を獲得する、という以外の三つは、イランが政治的に何を得られるか、という内容にはなっていないと思われる。
翻訳上の問題や慣習の違いがあるのかもしれないが、全体的に、まとまりが悪く、読みにくい本なのではないだろうか。
類書は少ないのかもしれないが、イランの核開発そのものについての突っ込んだ議論は余りなく、関係各国のスタンスが主な内容になっているので、必ずしも、本書でなければ、というものがあるのでもないように思う。
特にどうしても、という本ではないだろう。