『日本は原子爆弾をつくれるのか』

山田克哉 著
PHP新書
ISBN978-4-569-70644-3
原爆に関して書かれた本。
内容は、原子爆弾や原子炉の基本説明が七割、原爆の作り方が二割、日本が核を持つのにどの程度時間がかかるかという考察が一割、といったところで、日本が核を開発できるのかという問題を考察するためには基本理論から説明する必要があった、ということは分かるにしても、やや看板に偽りあり、という感じの本ではあった。考察そのものは、考察というより感想くらいのものでしかないし。
あくまで、そうした内容で良ければ、読んでみても、という本か。ただし、単に原爆の仕組みが知りたいというだけなら、この著者も他の本を書いているし、なにも本書でなければということはないような気がする。割と初心者向けに基礎的なところから書かれてはいるが、その分、何故濃縮ウランを使うと兵器級プルトニウムが採れないのか分からない、とか、書かれていないところもあるだろうし。
内容はやや中途半端だと思うが、初歩的なことから知りたければ、それなり、という本か。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
プルトニウム同位体の内、プルトニウム240は中性子を吸収しなくても自発核分裂を起こすので、プルトニウム240を多く含んだプルトニウムで原爆を作っても、早期に爆発してしまい、大きな威力のある原爆とはならない。普通の軽水炉で作られたプルトニウムは、ウラン238中性子を吸収してプルトニウム239になった後、長時間中性子に曝されることでプルトニウム240ができてしまうので、原爆用には使いにくい(とされる)。原爆に使うプルトニウムは、プルトニウム239が多くを占める兵器級プルトニウムで、黒鉛炉や重水炉、高速増殖炉で作られる。
軽水炉は、中性子の減速材に普通の水を使うが、普通の水素は中性子を吸収して重水素になることがあるため、効率が悪い。効率を上げるために、分裂を起こすウラン235を少し濃縮して使う。
プルトニウム型の原爆は、プルトニウム240による未熟爆発を防ぐために、密度の低い状態にしておいて、起爆時に爆薬の力で圧縮する。燃焼速度の違う爆薬を組み合わせてきれいに圧縮させる爆縮レンズの開発が必要である。
重水素三重水素核融合させると、極めて高速の中性子が出てくるが、プルトニウム239がこの高速の中性子を吸収すると、分裂する時に多くの中性子を吐き出す。原爆の爆発時にこれを利用してやると、核分裂連鎖反応を一気に進ませることができる。通常の原爆においては、核分裂が相当進むまでの間ウランやプルトニウムが飛び散ってしまわないよう、その周囲を重くて強いタンパーで囲う必要があるが、核融合を利用すれば、タンパーを薄く軽くできるので、原爆が小型化できる。
・水爆においては、重水素とリチウムを用意し、中性子を吸収したリチウムからヘリウムと三重水素ができることを利用して、この三重水素重水素核融合させる。
・日本が核を開発したところで、核実験を行わなければ、その威力を諸外国に示せず、抑止力にならない。核実験をアメリカの核実験場で行うならば、結局、アメリカの協力なしに核開発はできないことになる。