『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』

島村英紀
講談社文庫
ISBN978-4-06-275867-3
著者が逮捕・起訴された時のことを綴った体験記。
自身が経験した拘置所での拘留生活を冷静に描いたルポルタージュ的な作品で、拘置所の生活等が細かく書いてあるので(むろん著者が体験した範囲でだけだが。著者は警察にではなく地検に逮捕され、また接見禁止だったので、独房に入れられて、他の収容者とのかかわりは殆どない。接見禁止の場合は、新聞・雑誌の差し入れや自費購入も禁止されるらしい)、拘置所での生活に興味があるのならば、興味深く読めるのではないだろうか。
拘置所の間取りや食事の内容等が延々と書いてあって、やや細かすぎるきらいはあるし、当時のメモをそのまま組み込んでいるのか、重複もいくつかあったりするのだが、冷静で細かく書かれていて、良い本だと思う。
タイトルにはなぜ逮捕されとなっているが、逮捕された事件の話はそれ程なく、拘置所での暮らし振りを細かく描いた本。
そういうことに興味があるならば、購読しても良い本だろう。
以下メモ。
拘置所の中ではすべて番号で管理される。
・調書は何通も作る。裁判で証拠採用されるのは調書の一部という訳にはいかないから、どのように分けて作るのかが、検事の大事な仕事になる。
・土日は弁護士でも面会できないので、その時を狙って厳しい取り調べがある。
・船の飲料水にはタンクの壁のセメントが溶け込んでいるので、船乗りには歯の悪い人が多い。
・保釈中の裁判は、別にどこに出頭するでもなく、傍聴人と一緒に裁判所に入り、傍聴人と一緒に帰れる。