『新版 裁判の秘密』

山口宏/副島隆彦
宝島SUGOI文庫
ISBN978-4-7966-6454-7
日本の裁判実務を批判した本。
裁判が長すぎるとか強制執行は(裁判に訴えられるような人には)殆ど効力がないとかいうことがいくつか書かれたもので、一部癖はあるが、大体のところは、ありそうな裁判批判本と考えておいて良い本だろう。そうしたもので良ければ、読んでみても良い本。
共著になっているのは、弁護士の山口氏が書いたものを、副島氏が一般向けにリライトしているらしく、どこまで副島氏の見解が入っているのかは分からないが癖はあるので、副島隆彦と聞いてアレルギーを起こすような人はやめておいた方が無難だと思う。私は、この手の批判本は好きなので、それなりに面白く読めたが、再文庫化なので、原著が出てから時間が経っていることもあるし、そこまでどうしてもという程でもない。
後は、ありそうな裁判批判本。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・債務者に対する動産執行(赤紙をぺたぺた貼っていくあれ)は、債権者に立ち会う権利はなく、執行現場で道具を買い取った人が、いくらかさやを付けて債務者に売り戻したりしている。
・刑事と民事では、事実認定は民事の方が緩くても良い、というのが一般的な理解だが、日本の裁判実務においては、刑事裁判では検察側の主張する事実がすんなりと認定されてしまうので、事実認定は民事の方がかえって厳しい。司法研修所からそういう教育をしている。
・長男夫婦と同居し、長男の嫁に世話になっている舅や姑が、他の兄弟のところに行って嫁の悪口を言い立てたりしていると、遺産相続の時、長男は親の面倒を見たのだから多くよこせと言い、他の兄弟は大して親の面倒を見なかったと主張して、揉めることになる。
行政訴訟は、大抵はあれこれ理屈を付けて却下されて終わる。却下が難しい税金関係の場合だけは、処分が取り消されることもある。