『スーパーコンピューターを20万円で創る』

伊藤智義 著
集英社新書
ISBN978-4-08-720395-0
専用計算機GRAPEに関して、そのプロジェクトの黎明期を中心に描かれた開発物語。
基本的にはプロジェクトX風のそれなりの開発物語だと思うが、尻切れトンボというかめりはりがないというか、山なし、落ちなし(意味は、ない訳ではないだろう、多分)、という感じを、個人的には受けた。
最初から開発物語だと思って読んでいればまた違ったかもしれないが、開発物語ならば計算機の完成がクライマックスになる訳で、現在も継続中のプロジェクトで且つ一号機が試作機みたいなものだから難しい面はあったのかもしれないものの、もう少し、計算機の完成に向けての盛り上がりみたいなものがあっても良かったのではないだろうか。平均的にそれなりに面白いが、なんか盛り上がりのないままに終わってしまった、という印象。
平均的にそれなりに面白いので悪い本だとはいえないだろうから、興味があるならば、読んでみても、という本ではあるが、積極的に薦めるにはやや疑問の故なしとはしない。実際に開発した人が執筆しているという点で貴重なものではあり、またそこが興味深くもあるのだろうが、開発者が書いているのにルポ風になっていて、妙な感じはするし。
それなりに面白いので惜しい気はするが、敢えて薦める程ではない。それでも良ければ、というところだろう。