『狂った裁判官』

井上薫
幻冬舎新書
ISBN978-4-344-98024-2
退任に追い込まれた裁判官が裁判制度の悪口をいった本。
良くいえば、業界裏話的な部分はあるので、そういうのが読みたいのなら読んでみても良いかもしれないが、一方的な悪口なので、コインの片面しか見ていないだろう、という気はし(例えば、判例主義や裁判員制度に文句をつけているが、イギリスはそれでやっている訳だから(裁判員ではなく陪審員だが)、判例主義や裁判員制度がそれだけで駄目だ、ということはないのだろう)、私には余り良い本だとは思えなかった。
別に薦めるような本ではないと思う。
メモ1点。
・上訴されるのは当事者が判決に不満を持っているからだし、上級審で逆転判決が出れば自分の判決が否定されることにもなるので、人事評価の面から、裁判官は上訴を避けようとする。刑事裁判で執行猶予がつけば被告人はまず上告しないので、執行猶予にしたり、上訴しそうな方を勝たせたり、明らかに片方の主張に無理がある場合でも、慎重な審議を重ねているフリをするために長い間結審しなかったり、民事訴訟では、和解が成立すれば上訴がないことからも、和解が勧められる。