『信玄の戦略 組織、合戦、領国経営』

柴辻俊六 著
中公新書
ISBN4-12-101872-9
武田信玄の領国経営と領国拡張について書かれた本。
家臣の職制とか版図拡大の過程とかの結構細かいことが、こまごまと概説的に書かれた本で、私には取り立てて面白いものでもなかったが、そういうこまごまとしたことを知りたい人向け、という感じの本ではあるのだろうか。
大河ドラマ便乗本として考える程、一般向けの読み物ではないし、(かといって所詮は大河ドラマの便乗本なのだから)なんらかのテーマが論じられている訳でもないし、私としては、余り良い本だとは思えなかった。
あとがきには、武田信玄の「専制的な支配の実態を明らかにすることに主眼を置いた」と書かれているが、本書のどこにそのような分析があるのか、私には皆目理解できない。税役に関して書かれているところなのだろうか? 税金なんて、歴史上最も専制的でない国家にもあったのだろうに。
後、史料の内容に対する批判が甘いような気がした。著者としては、史料に書いてあることは、あくまでそれを尊重して、現代的な立場からの批判は加えない、という立場なのだろうが。
だから、私としては薦めるような本ではない。新書レベルではないこまごまとしたことが知りたいなら、読んでみても、というところだろう。