『対称性から見た物質・素粒子・宇宙 鏡の不思議から超対称性理論へ』

広瀬立成 著
講談社ブルーバックス
ISBN4-06-257505-01
素粒子論について書かれた本。
一応、タイトルにある通り、対称性を鍵として描かれたものではあるが、実際にそれをどこまで特色として評価して良いのかは、やや疑問に思う。最初の方に出てくる鏡の対称性と、おそらくは本書の中心となるべき素粒子の対称性とが、説明として、巧く繋がっていないのではないだろうか。
ということで大体のところ、別に普通の素粒子論に関する読み物、と考えておけば良い本か。
別に普通の素粒子論に関する本なので、そうしたもので良ければ読んでみても、というものではあるが、初学者向けに特に優しく分かりやすい、とか、中級者向けに深い内容がある、とか、上級者向けに最新の研究内容が書かれている、とか、その他何らかの特色があるということは、余りない。
特に失敗したということはないが、別に成功したという訳でもない本。
類書の中で特に本書を、という売りには、欠けるだろう。
以下メモ。
・荷電スピンという考え方を導入すると、陽子と中性子は、元々同じ粒子で、荷電スピン1/2のものが陽子、荷電スピン−1/2のものが中性子、という考え方ができる。
・弱い力を伝えるウイークボソンは、弱い力の到達距離内では質量がない光子と同じように振る舞う。その距離内においては、必要なエネルギーは不確定性原理によって得られるが、それより長い距離ではゲージ対称性が自発的に破れて、ウイークボソンは質量を獲得する。
・強い力はクオークに働いてレプトンには作用しないが、強い力と電弱理論を統一する大統一理論は、クオークにもレプトンにも働くので、そこから、クオークレプトンの相互作用、陽子崩壊が導かれる。
・荷電スピンという考え方で陽子と中性子を同じ粒子として扱ったように、フェルミオンとボソンとを同じ粒子として扱おうとするのが、超対称性である。フェルミオンに超対称変換を二度繰り返すと、フェルミオン→ボソン→フェルミオンとなるが、フェルミオンはこの時、時空座標を変える。この移動は、元の粒子に重力が働いたことを示唆している。