『大栗先生の超弦理論入門 九次元世界にあった究極の理論』

大栗博司 著
講談社ブルーバックス
ISBN978-4-06-257827-1
超弦理論についての一般向け解説書。
特に可もなく不可もない普通の解説書だと思う。興味があるならば読んでみても、という本か。
私には面白かったが、それは多分、本書が私にとって超弦理論の何冊目かの本だからではないかと思う。
本書一冊で、ということはあまり考えない方がいい。
超弦理論や物理学について何冊か読むつもりがあるなら、そのうちの一冊としてはあり。
現実問題、一冊で何から何まで分かる、というのは無理だし、こんなものなんだろう。
興味があるならば読んでみても、という本だろう。

以下メモ。
・二乗するとゼロになるグラスマン数を座標に使うと、一つの状態に複数の粒子が入ることのできないフェルミオンを扱うことができる。
グラスマン数を座標に使う空間が超空間で、普通の数の座標軸とグラスマン数の座標軸との回転対称性が超対称性である。
・光子の質量はゼロでなければならないが、光子を弦の振動と考えた場合、量子力学的なゆらぎのためにエネルギーが生じてしまう。
弦の振動は節の数が1から無限大まであり、光子は光速度一定のため進行方向には振動しないので、光子の存在する空間の次元マイナス1の方向に振動する。
1から無限大までをすべて足し合わせるとゼータ関数から-1/12になることが知られているので、超弦理論では、光子が九次元空間に存在するとき光子の質量がゼロになる。
・超対称性が成り立つ最大の次元は十次元だが、十次元の重力理論と九次元の超弦理論の間に矛盾はなく、(結合定数の大きさによって)別の現れ方をしたものである。
各種の九次元の超弦理論の間にも、同様の双対性がある。
・重力を含む九次元のIIB型超弦理論は、重力を含まない三次元の場の量子論に対応し、それによって説明できる。