『「複雑ネットワーク」とは何か 複雑な関係を読み解く新しいアプローチ』

増田直紀/今野紀雄 著
講談社ブルーバックス
ISBN4-06-257511-6
大体のところ、ネットワークのモデル化に関して書かれた本。
主に、現実のネットワークをどのようにモデル化して捉えるのか、というようなことが書かれたものと考えておけば、多分大過ない。そのようにして構築されたモデルによって現実のネットワークを分析すると、どうなるのか、という話も、扱われてはいるが、その成果は、おそらくまだそれ程上がってはいないのだろう。
割と初歩から説明してあるように思うし、それなりに(成果がないなりに)いろいろなトピックを扱ってはいるので、ネットワーク理論の考え方や手法に関して興味がある、という人には、悪くない本ではないだろうか。
そうしたものに興味があって、あくまで手法で良ければ、読んでみても良い本だろう。
ただし、私としては、面白いのは、手法ではなくて、その手法によって得られた成果である、と考えるので、それ程たいした成果が書かれていない(上がっていない?)本書が面白いか、といわれれば、人に薦める程ではない、とは思う。
また、手法のみで良い人には、モデル化の話だけに絞ったものの方が良いかもしれないし。
個人的には、もう少し面白い成果が上がってから、で良いような気もする。
以下メモ。
・多くのネットワークでは、頂点が持っている枝の数(次数)には、かなりのバラ付きがあり、べき分布となる(その次数を持っている頂点の割合は次数の何乗分の1にしかならないので、大きな次数を持ったハブが存在する)。このような性質をスケールフリー性という。
 コンピュータ・ネットワークがスケールフリーである場合、ハブを意図的に狙われると弱く、感染症の場合、多くの人と接触するハブとなる人がいると、感染が広がりやすい。
・視細胞と繋がっている双極細胞は、繋がっている視細胞が光を受けた時に強く反応し、繋がっている視細胞の周囲の視細胞が光を受けた時には、反応を抑える。これによって、反応が増幅され、画像処理においてパターンの境界を強調することができる。
 このような情報が大脳の第一次視覚野に入っていくが、第一次視覚野のニューロンが、例えば横長に位置するいくつかの視細胞からの入力を最終的に受ける時、このニューロンは、明るい棒が横向きになっている場合に、最も強く反応して、パターンを識別する。