『批評理論入門 『フランケンシュタイン』解剖講義』

廣野由美子 著
中公新書
ISBN4-12-101790-0
フランケンシュタイン』を例に様々な小説批評のありようを述べた本。
あれこれの批評が総花的に集められた概説で、たとえるなら、ゼミで輪読する副読本、といった感じの本か。そういうものとして書かれたのかどうかは知らないが。入門レベルだが特に懇切丁寧ということはない入門書。
本当に輪読するのならばともかく、単独の本としては、入門レベルに徹するならもっと平易に書けるはずだし、本書レベルの記述ならもう少し内容に何か欲しいという感はなきにしもあらずだが、入門書としては、こんなものといえばこんなものではあるのか。特に悪くはないので、こうしたもので良ければ読んでみても、という本だろう。
ちなみに、人名、作品名、用語等にいちいち英題・英スペルが付いているのは、色々な点で楽しめた。結構orが付く副題が多いな(『フランケンシュタイン』も然り)、とか。前景化(ある要素や属性を強調して、読者の注意を引き付けるように際立たせること)がフォアグラウンディングというのは、そのまま訳しただけだろう、とか。ハーレクイン・アンド・マザーグースを『道化と母がちょう』と訳すとイメージが違う、とか。
以下、メモ。
・出来事を時間順に並べたものがストーリーで、語られる順に並べたのが、プロット。
オウィディウスの『変身物語』では、プロメテウスは、粘土をこねて最初の人間を創り出したとされる。
(『フランケンシュタイン』の副題は、『あるいは現代のプロメテウス』である)