『倭の五王 王位継承と五世紀に東アジア』

河内春人 著
中公新書
ISBN978-4-12-102470-1
倭の五王について書かれた本。
国史書に出てくる五人の倭国王について、その中国史書の記述を中核に著者の考えを描いたもので、そうしたものといえばそうしたものという本か。それでよければ読んでみても、というところ。
元々、数百字しかないような記述をああだこうだと一冊の本にふくらませているわけで、勇み足の部分は多分あるだろう。
そんなことをいったら何も書けないかもしれないが、かといって史料を断片的に且つ自分の都合のよいように用いれば九州王朝説だって出来上がるわけで、本書にそういう雰囲気がないとはいわない。
少なくとも、初心者向けに優しく解説された本ではないと捉えるべきではある。
東アジアの古代史についてある程度以上知っている人向き。
それでよければ、という本だろう。

以下メモ。
五胡十六国による華北混乱の隙の中で、高句麗が力をつけ、百済を圧迫し、百済高句麗との対抗政策として倭との同盟を推し進めたことで、倭の五王が東アジアの国際舞台に登場する機会が作られた。
・そのために倭国王の遣使は宋から百済と同等の地位を得ることを求めた。
倭王武による上表文は、古典からの借用を散りばめた美文なので、歴史的事実をあまり読み取ろうとすべきではない。