『幕末維新と佐賀藩 日本西洋化の原点』

毛利敏彦
中公新書
ISBN978-4-12-101958-5
鍋島直正(閑叟)と江藤新平を軸に、幕末維新期の佐賀藩佐賀藩主・藩士の歴史を追った本。
基本的に、江藤贔屓の立場から書かれた幕末維新の歴史、といった感じの本で、面倒臭くはあるが、そうしたもので良ければ、読んでみても、という本か。
佐賀藩を顕彰するために桂川家の存在も無視されているし、著者の主張は結構割り引いて捉えなければならないだろうから面倒ではあるが、そもそも、全くの初心者向けというよりは、ある程度幕末維新の歴史を知っている人に従来とは別の見方を提供する本、ではあるのだろうから、そう考えれば、これはこれでこんなもの、という本ではあるのだと思う。
そうしたもので良ければ、読んでみても、という本だろう。
以下メモ。
・長崎御番を命じられていた佐賀藩は、元々長崎との関係が深く、また、フェートン号事件に巧く対処できなかったために藩主(直正の父斉直)が逼塞になり、対外問題への危機意識が強まった。
・直正は、長崎防衛用の港を確保するために天領天草島を借り受けようと幕府に働きかけていたので、大老井伊直弼とも近く、一橋派とは距離を置いていた。
佐賀藩が倒幕側に参加したのは実質的に鳥羽・伏見の戦いの後だったが、戊辰戦争においてその砲兵隊が威力を発揮した(ただし、当のアームストロング砲は佐賀藩の自作ではなくイギリスからの輸入品だったらしい)。