『こんなに役立つ数学入門 高校数学で解く社会問題』

広田照幸/川西琢也 編
ちくま新書
ISBN978-4-480-06358-8
研究者が、研究で使用している高校で学ぶ数学に関して書いたエッセイ。
要は、高校生に対して、学校で学んでいる数学は役に立つんだよ、ということを説いたもので、それは別に読む前から分かってはいたのだが、何というか、本当に、数学が何の役に立つのか、と思っているような人向けの本。
それなりには面白いが、数学が何の役に立つのかという疑問は全く持っていない私には、本書はやや微妙だった。高校で学ぶ数学を使っているといっても、他の一般向けの本なら書かれないような特殊なことは余りないし、せいぜいが、微分してこの式を得ました、といった程度の、ほんのさわりのものでしかなく、それでは、知らない人には分からないし、面白くもないのではないかと、私ならば思う。メインモチーフがこうだと、残りは、煮え切らない内容のアンソロジーになってしまう訳で、私には本書は中途半端だった。
ただし、逆にいえば、高校で学ぶ数学を全く理解していなくてもイメージはつかめる、ということではあるかもしれないから、これはこれで一つの方策ではあるのかもしれず、数学なんて何の役に立つのかと思っているような人や、高校生や大学生くらいの人には、良いのかもしれない。
そういう人ならば、読んでみても、というところか。
私には余り合わなかったが、数学が何の役に立つのかと思っているような人には良いのかもしれないので、そういう人なら読んでみても、という本だろう。
メモ1点。
地震の大きさはそれによってずれた断層の面積と比例するので、活断層の長さによってその活断層で起こる地震の最大マグニチュードが想定できる(断層の長さをLkmとすると、その断層で起きた地震マグニチュードMとの関係は、log10L=0.6M-2.9 になることが知られている)。ただし、近接する複数の活断層が同時に動くこともある。