私には合った

万葉集講義 最古の歌集の素顔』
上野誠
中公新書
ISBN978-4-12-102608-8
万葉集についていくつかのことが書かれた本。
あまり知らないことだったので、個人的には興味深かった。ややまとまりには欠ける感じだが、興味があるならば読んでみてもいい本か。
人によっては、もう少しまとまった入門書のほうがいいかもしれない。
なんというか、著者の発想の赴くままに、万葉集に関することがいくつか語られただけという感じはする。
計算されているのかもしれないが。
『文選』に接続する漢字表記の、当時のグローバルな書としての在り方と、日本独自の、やまと歌としての在り方という万葉集の両面性を描こうとしているので、まとまりがないのは当然か。
それでも多分、あまり万人向けにいい本だとは言えないのではないだろうか。
私には合ったので、そういう人向き。
それでも良ければ、読んでみてもいい本だろう。

以下メモ
・「熱帯きこうの地にきこうしてきこうを書いた」というような文章は、気候寄港紀行という漢字の知識なしには読解できないから、日本語から漢字をなくしてわかち書きにするだけではうまくいかない。
(と著者は主張するが、韓国とかではどうなっているのだろう)
万葉集に収録されている歌を詠じたのは漢字文書によって統治を担う律令官人層であり、東歌や防人歌も、そうした律令官人層に接続する地方豪族の人たちの歌であって、庶民の歌というわけではない。